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タイの子どもは過保護?という話 - THAILAND -

No.492/2018.12
ナイロン営業部/ 草野 聡
画:クロイワ カズ

6年間の駐在で特に印象深いのは、タイの人はとても子どもを可愛がるということです。

5歳になったばかりの我が娘にも、見ず知らずの人が笑顔で話しかけてきたり、電車の中で立っていると、我先に席を譲ってくれたりします。すぐに降りるので私が断ろうとすると、なんてひどい親だろうという非難の視線が私に浴びせられます。居たたまれなくなって、別の車両に移動するとそこでも同じことが起こり、結局娘は席を確保するのです。

よく親子で出かけるレストランでは、店員たちが次々にやってきて変な顔をして娘を笑わそうとします。娘がニコリとすれば例外なくホッペをなでていきます。また、娘の好きなスイカジュースの作り方を見せようとカウンターの中に招き入れてくれたり、ある時は食事の最中に女店員が出てきて、「こうした方が可愛いよ」と、娘の髪を三つ編みにしてくれたこともあります。

学校に行くのも、治安や交通事情を考えてスクールバスが迎えに来ます。体調がすぐれないと親が車で送り迎えすることもあります。

このように、子どもによくしてくれるのは親としても有難いことではありますが、あまりチヤホヤされすぎると、駐在を終わり、日本に帰ったときに思わぬしっぺ返しを受けます。

娘は小学5年生で日本に帰りました。5年間徒歩で登下校していた日本の小学生に較べると、どこに行くのにも車に乗っていた娘の運動能力は明らかに見劣りします。また、こんなこともありました。少し混み合った電車に娘と乗っていたときのことです。

私は吊り革を持って立ち、娘は私の腕につかまって、辺りを見渡していたかと思うと、突然大声で叫びました。

「誰も席を譲ってくれない!」

乗客の目が一斉に私に集中、背中が汗ビッショリでした。