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宇部興産、DSM(オランダ)と「キラル技術」で提携

2005年4月18日

宇部興産(株)(社長:常見和正)は、本日、オランダのDSM N.V.社(CEO ピーター・エルバディング。以下「DSM」)と、DSMが持つ均一系触媒キラル技術2件(「MonoPhos」と「Shi Epoxidation Catalyst」。以下「本技術」)の日本における使用権と技術評価を含む技術導入について、基本合意に達した。

1.本技術の内容

「MonoPhos」は、DSMがグローニンゲン大学・フェリグナ教授(オランダ)の研究グループと共同で開発した、不斉還元触媒の新しいタイプの一連のリガンドで、空気や湿度に対して安定、且つ調製も容易という特徴を持つ。 
また、不斉還元の光学収率も非常に高く、基本的に100%収率・100%e.e.と優れており、DSMでは、既にこの技術を組み込んだ新薬の製法プロセスを複数のユーザー向けに開発し、パイロット設備及び工業規模で展開している。

【MonoPhosの化学式】

【MonoPhosの化学式】

もう一方の「Shi Epoxidation Catalyst」 は、コロラド州立大学・シー教授(アメリカ)が開発し、DSMが同教授から独占使用権を得ているオレフィンの不斉エポキシ化反応の触媒である。
この触媒は、不斉エポキシ化では初めての有機化合物触媒であり、特に2-、3-置換オレフィン、又はエノールエーテルのエポキシ化において高いエナンチオ選択性を示す。

2.宇部興産が技術導入する意味及び事業展開の可能性

宇部興産は、cGMP対応の設備・ソフトと高いプロセス開発力、そしてカテコール誘導体や複素環合成の技術等をベースに、国内外の製薬メーカーから新薬の製造受託を、開発段階から請負っている。

また、キラル技術の分野では、酵素法による不斉アミノ酸技術を保有しており、この技術を使って国内外の複数の製薬メーカーに新薬中間体を供給している。

宇部興産では、今回、本技術を導入することによって、今まで受託が難しかった不斉水添や不斉エポキシ化工程を含む新薬の製造についても積極的に受託していく意向であり、本技術を必要とする新規案件を、年間数件受託できると期待している。

3.DSMが技術導出する意味

DSM として本技術の日本での展開が充分なものではなかったが、今回、宇部興産に技術導出することにより、日本の製薬メーカーの案件に対しても、本技術を幅広く且つスピーディに展開することができる。

4.宇部興産の製薬事業概況

宇部興産では、ファインケミカル事業を展開する中で、技術による差別化を図るため、1990年代前半から、ユーザーの信頼とcGMP対応設備・ソフトが必須である医薬品の原体・重要中間体の受託製造に注力してきており、2001年に医薬品の受託製造を専門に行う製薬ビジネスユニットが誕生した。

国内外の受託製造会社の多くがジェネリック原薬の製造から出発し、現在もそれらを製造しているのに対し、宇部興産の製薬ビジネスユニットは、新薬の受託に特化しているという点に特徴がある。

5.DSMの医薬品関連事業概況

DSMは、ライフサイエンス、ニュートリショナル製品、パフォーマンス製品及びインダストリアル・ケミカルズの4部門からなる世界有数のスペシャリティー化学メーカーである。

その中で、ライフサイエンス部門は、医薬品・食品・飼料添加物他から成っており、2004年の売上高は、約20億ユーロ(約2,800億円)。

このうち、医薬品並びに中間体の受託生産部門は、DSM Pharmaceutical Productsと呼ばれ、ライフサイエンス製品部門全体の売上高の25%を占める。

DSM Pharmaceutical Productsでは、医薬品並びに中間体受託や抗体・バイオ医薬品受託、製剤受託といった医薬品受託に関わる全ての事業を手がけており、医薬品受託分野では世界トップの規模を誇る。

【用語解説】

(1)キラル技術 右手・左手のように、鏡に映った鏡像のような関係にある化合物のどちらか一方(これを光学活性体と言う)を選択的に製造する技術。不斉技術とも言う。
(2)不斉還元 オレフィン等の二重結合に水素を付加することによって、光学活性体を製造する技術。「不斉水添」も同じ意味。
(3)リガンド 配位子。触媒において、中心の金属の周りに配位している有機化合物。
(4)光学収率 不斉反応において、光学活性体の一方を他方より多く生成する割合。
(5)2-、3-置換オレフィン 二重結合に、2個または3個の置換基が付いたオレフィン。
(6)エノールエーテル オレフィンの二重結合の炭素にエーテル結合が付いたもの。
(7)不斉エポキシ化 オレフィンの二重結合を酸化しエポキシ基を導入する際、鏡に映った鏡像のような関係にある化合物のどちらか一方を選択的に製造する技術。
(8)エナンチオ選択性 鏡に映った鏡像のような関係にある化合物のどちらか一方を選択的に製造する際の選択性。
(9)cGMP対応 current GMP(Good Manufacturing Practice)。FDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)の要求する医薬品製造基準。
(10)カテコール誘導体 2価フェノール誘導体。2価フェノールから派生して製造される化学品。
(11)複素環合成 ヘテロ環合成。酸素・窒素・イオウ等の炭素以外の原子の入った、環状構造を持つ化合物を複素環。ヘテロ環とも言う。
(12)不斉アミノ酸技術 鏡に映った鏡像のような関係にあるアミノ酸化合物のどちらか一方を選択的に製造する技術。
【右:DSMジャパン フランス・ヴァン・ヘルモンド社長 左:宇部興産 機能品・ファインカンパニー 紀平浩二カンパニープレジデント】

【右:DSMジャパン フランス・ヴァン・ヘルモンド社長 左:宇部興産 機能品・ファインカンパニー 紀平浩二カンパニープレジデント】

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