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M251

電子回折パターンを用いた結晶性材料の定性分析

電子回折パターンを用いれば、試料局所の結晶構造を評価できます(技術資料「電子回折および高速フーリエ変換(FFT)パターンについて」参照)。以下では、その動径プロファイルから、結晶性材料を定性分析した事例を示します。

SiC焼結体の明視野STEM像を図(a)に示します。この焼結体ではSiC相が主体であり、Carbon相も一部に認められました。これらの相を含む領域の電子回折パターン(図(b))では、多数の回折スポットが見られ、領域内に複数の結晶が存在することを示唆されます。
存在する結晶を定性分析するには、電子回折パターン中心(透過スポット)から回折スポットまでの距離(d-1)を収集する必要があり、それには動径方向の強度を演算する方法が有効です。
動径方向の強度を平均化した場合(図(c)中段)、回折スポットが動径プロファイルのピークとして認められます。ここで、高強度の回折ピークは識別できますが、低強度の回折ピークは識別しにくくなっています。
動径方向の強度の最大値から平均値を差し引いた場合(図(c)上段)、低強度の回折ピークであっても識別しやすくなります。例えば、4.7nm-1付近の回折ピークについては、結晶固有の面間隔(図(c)下段)と照合することで、Graphite由来だと考えられます。

図a: SiC焼結体の明視野STEM像。SiC相の他にCarbon相が見られる。
図b: SiC相とCarbon相を含む領域の電子回折パターン。多数の回折スポットが見られ、領域内に複数の結晶の存在が示唆される。
図c: 「SiC相とCarbon相を含む領域の電子回折パターン」の動径プロファイル

図:(a)SiC焼結体の明視野STEM像、(b)SiC相とCarbon相を含む領域の電子回折パターン
(c)(b)の動径プロファイル

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