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P336

PPの最長緩和時間測定による成形性評価(1)

高分子材料の成形性評価方法の一つとして応力緩和測定があります。溶融状態で応力緩和挙動を測定することで樹脂の流れやすさ(成形のしやすさ)の判定に役立ち、成形性の良し悪しの要因究明として有用なデータとなります。
装置は溶融粘弾性測定装置(ARES-G2)を用い、コーン&プレート治具を使用して測定を行います。測定の手順は試料を溶融させてから一定時間定常流測定を行い、せん断(回転)を停止した後の応力緩和挙動を測定します。以下にPP(ポリプロピレン、MFR=5)の200℃と230℃の測定例の重ね書き(図1)及び定常流停止後の応力緩和挙動曲線の重ね書き(図2)を示します。図2の結果から停止後の緩和時間は温度の高い230℃の方が短くなっていることが分かります。

図1:PPの最長緩和時間測定の重ね書き

図1:PPの最長緩和時間測定の重ね書き

測定条件

装置 溶融粘弾性測定装置 ARES-G2(TA・インスツルメント・ジャパン社製)
ジオメトリー コーン&プレート 25mmΦ(コーンアングル:0.1rad.=5.7°)
定常流測定、せん断速度 1sec-1
測定時間 2分(停止後緩和挙動測定)
測定温度 200℃、230℃(2点)
雰囲気 窒素気流中
図2:定常流測定停止後の応力緩和挙動曲線の重ね書き

図2:定常流測定停止後の応力緩和挙動曲線の重ね書き

図2の応力緩和挙動曲線の傾きから次式を使って最長緩和時間を算出できます。

図3:最長緩和時間の算出式

上記の式から最長緩和時間(τm)を算出すると、温度の低い200℃の結果は230℃に比べ、約2.5倍の値となりました。最長緩和時間(分子の絡み合いがほどける時間)の速い230℃は200℃に比べ、成形性が良いと思われます。
今回は、同一試料で温度の違いについて検討しましたが、銘柄の異なる試料(例えばMFR、分子量、分子量分布等の違うもの)について比較すると、より興味深い結果が得られると思われます。

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